この漫画を人に勧めると、2〜3ページぺらぺらとめくって
「なんだ、エロ漫画じゃん」
と言うのだけれど、ちょっと待ってほしい。
まあ確かにエロ漫画には違いないのだけど、ただのエロ漫画ではないのだ。
ちょっと我慢して読んで欲しいのである。
『センチメントの季節』は、女子高生を主人公にしたオムニバスストーリー形式であり
その全てにセックスシーンがあるが、エロいというよりむしろけだるいと言ったほうがいい。
思春期の少女の性を、女性作者の自虐的で生々しい視点から描いている。
少女たちはみな物憂げだ。
自らの実質的な矮小さと、男たちが自分の性に群がってくるという事実との間に
どうしようもない不条理を感じている。
そして開花していく肉体とは反比例して、精神は不感症に陥っていく。
彼女たちは自分が花であることを自覚している。
そして、花が散っていくことも当然予見している。
彼女たちは退廃的にセックスし、金のために売春もするが、
それは快楽のためでなく、むしろ自傷的な衝動の成せる業であるのだと思う。
いや、もしかしたら快楽を求めること自体が自傷なのかもしれない・・・
読後、非常に虚無的な気分になるという稀有なエロ漫画である。
また、台詞回しにかなりのセンスを感じる。
じっとりとした部屋の中で、男と延々とセックスしている女子高生がその部屋を
「沼の底」みたいだと表現しているシーンがあったが、あれは素晴らしかった。
作者は榎本ナリコという方だが、僕は『センチメントの季節』以外読んだことがない。
きっとほかも面白いだろうと思うのでチェックしてみよう。
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